(AIにより生成したイメージ画像を使用しています。)
英語とフランス語の読書が大好き、ヒデです。
コウキ君とクミコ女史のフランス語読書会の様子をお伝えします。
引き続き、『星の王子さま』フランス語原書 Le Petit Prince を検討していきます。原文を参照しつつ、Audible で音源を聴きながら読んでいただけると、なお一層楽しめると思います。
おすすめのAudible音源はこちら。Le petit prince: Édition anniversaire
もはやフランス語がわからなくても、音楽として楽しめます(この記事では、これを単に「Audible音源」と呼称します)。
(前回コウキ君とクミコ女史の紹介、献辞の検討はこちら。)

今回検討したいのが、第2章冒頭です。
コウキ:第1章はとばすのですか?
ヒデ:第1章においては本作の語り手が、6歳だったころ、自分の描いた絵を 大人たち(les grandes personnes)に見せるものの理解されず、がっかりし、しかし、自分自身も成長し、大人(la grande personne)が満足するような話ししかしなくなったということが語られます。
この第1章がどのような気持ちを込めて書かれた章であるか、実は僕にとって初読時には難しく感じました。
クミコ:わかります。
子供の感性を失った大人への批判なのかな、と思いながら読むのですが、それだけでは説明できない、妙に静かな孤独感がありますよね。
いったいそれが何からもたらされるのか、初読時にはわからなかったと思います。
ヒデ:そうなんです。第1章には何か独特の「諦め」のような空気があるのですが、それはいったい何なのかがわかりにくいのです。
そこで、第1章については、いったん置いておいて、まずは、第2章から検討したいと思うのです。
第2章冒頭から引用
今回の検討対象である、第2章の冒頭部分を引用します。Le Petit Prince 原文を参照しながら、Audible 音源を聴くと一層楽しめます。
(Audible音源Chapitre 2 の3:12参照)
J’ai ainsi vécu seul, sans personne avec qui parler véritablement, jusqu’à une panne dans le désert du Sahara, il y a six ans. Quelque chose s’était cassé dans mon moteur. Et comme je n’avais avec moi ni mécanicien, ni passagers, je me préparai à essayer de réussir, tout seul, une réparation difficile. C’était pour moi une question de vie ou de mort. J’avais à peine de l’eau à boire pour huit jours.
Le premier soir je me suis donc endormi sur le sable à mille milles de toute terre habitée. J’étais bien plus isolé qu’un naufragé sur un radeau au milieu de l’océan. Alors vous imaginez ma surprise, au lever du jour, quand une drôle de petite voix m’a réveillé. Elle disait : …
«S’il vous plaît… dessine-moi un mouton…
–Hein!
–Dessine-moi un mouton…»
J’ai sauté sur mes pieds comme si j’avais été frappé par la foudre. J’ai bien frotté mes yeux. J’ai bien regardé. Et j’ai vu un petit bonhomme tout à fait extraordinaire qui me considérait gravement.
状況について
時について
ヒデ:まず驚くのが、ここで急に時間が具体的にさかのぼることです。
しかも、かなりさかのぼります。
il y a six ans(6年前)
第1章は、どこか寓話的で、時間感覚も曖昧でした。
しかしここで突然、「6年前」の回想になる。
いったいなぜ、6年前のことを回想することになったのか。
6年前に何があったのか、6年間何があったのか。
しかも、場所が…
場所について
dans le désert du Sahara (サハラ砂漠で)
これはLe Petit Prince という作品を特徴づける舞台設定です。
クミコ:サハラ砂漠って、非常に広大な砂漠であり、“世界の果て”みたいな響きがあります。
ヒデ:たしかに。
そのうえ、
à mille milles de toute terre habitée(人の住む土地から1000マイル離れていた)
という表現。
ここでは、“孤独”が徹底的に強調されています。
コウキ:しかも、
J’étais bien plus isolé qu’un naufragé sur un radeau au milieu de l’océan.
「大海原の筏の上の遭難者より孤独だった」
という表現は、孤独の極地ですよね。
ヒデ:そうです。
第1章で精神的な孤独を醸し出していた人物が、ここで物理的にも完全孤立状態になる。
つまり第2章冒頭は、
精神的孤独
+
物理的孤独
が重なる場面といえそうです。
深刻な状況
ヒデ:そして状況はかなり深刻です。
C’était pour moi une question de vie ou de mort.(それは私にとって生死の問題だった)
飛行機は壊れ、水も8日分しかない。
これは普通に読むと、遭難小説の導入です。
クミコ:そうですよね。
Le Petit Prince は、児童文学っぽいタイトルなのに、状況は全然かわいらしくない。
むしろ死がかなり近い。
Un petit bonhomme の登場
ヒデ:さて、このような極限状態において、いよいよ、衝撃的なセリフが登場します。
Dessine-moi un mouton. (羊を描いて)
コウキ:小さい子供が「羊を描いて」と言うのは当たり前だし可愛いと思いますが、生きるか死ぬかの状況でこの発言は見当違いも甚だしいですよね。
この”un petit bonhomme”は明らかに普通の人間の感覚を持ってはいない…
とこの登場シーンで推測できます。
発言の内容自体は子供っぽいけれど明らかにおかしな人物だという第一印象です。
ヒデ:生死の境、ぎりぎりの極限状態にあって、この人物は状況的にまったく的外れな発言をします。
どう考えても、語り手にとってもっとも重要なことは生存です。
でもこの人物は、生存の話をしない。
しかし、これこそがこの作品の核心なのです。
“大人が最重要だと思っていること”から、微妙にズレたことを言っているように思える。
しかし、本当にズレているのは誰なのか。
死を前にした人間にとって本当に大切なものは何か――
それを語ろうとしているのが、
un petit bonhomme
Prince (王子)でもなければ、garçon (男の子)でもない。
bonhomme
には、もっと曖昧で、不思議で、
「小さな人影」
「小さな存在」
といったニュアンスを感じます。
しかし、献辞とタイトルについて検討した本作のキーワード中のキーワードである「petit」、
そこに「bon(good的ニュアンス)」がつくことで、どこか親しみのある響きになります。
tout à fait extraordinaire qui me considérait gravement
その存在は、まったく普通でなく、真剣なまなざしで語り手を見ていたといいます。
親しみのあるかわいらしい存在が、真剣なまなざしで「羊を描いて」と語り掛けてくる。
しかも、生死の境である孤独な極限状態下で。
これにより、物語のとりあえずの舞台設定がととのいました。
第2章冒頭に関する総評
ヒデ:ここまで、今回引用した Le Petit Prince 第2章冒頭の総合的な印象はいかがでしたでしょうか。
コウキ:砂漠のど真ん中からいきなり”un petit bonhomme”が登場しただけでも十分衝撃的です。
しかもこの人物は生存に興味が無いようで、完全に自分の世界に浸っているようにみえます。
正直、自分がこの状況にいたら、こんなおかしな人とは関わりたくない. . .というのが第2章を初めて読んだ際に抱いた感想です。
まとめと次回予告
語り手の前に突如現れたどこか親しみを感じる小さな人物、状況と乖離した「羊を描いて」という発言と、発言内容とマッチしない真剣なまなざし。
このような状況設定の中、いったいどのようなことが二人の間で語り合われていくのか。
ここから、二人の間で、印象的な会話が続いていきます。
語られた内容はこの状況だからこその重要な意味をもっていきます。
そして、もうお分かりですね。
表現一つ一つに込められた意味の核心を味わうには、un petit bonhomme といった、原文に用いられているシンプルで美しいフランス語を味わう必要があることを。
ぜひ皆様もフランス語原文とAudible音源をじっくりと味わってみてください。
次回、第3章冒頭を検討します。
ご期待ください。
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