(AIによって生成したイメージ画像を使用しています。)
Never Let Me Go スタイリッシュ英語読書会最初の課題図書
英語読書が大好き、ヒデです。
前回の記事では、スタイリッシュ英語読書会のコンセプトとメンバーをご紹介しました。
今回からは、2025年2月から4月にかけて実施した、
Never Let Me Go(https://amzn.to/4vknwKV 邦題『わたしを離さないで』)
読書会の様子をお伝えしていきます。
この読書会で僕が一貫して大切にしているのは、ただ一つ。
英語を、楽しむこと。
それ以上でも、それ以下でもありません。
Never Let Me Go は僕が独断と偏見で選びましたが、もちろんこの観点からそれなりの理由がありました。
メンバーのうち、ヒナさんは当時すでに、大学院における研究の最先端で英語を用いていたわけで、何を読んでもらっても大丈夫だったと思います。
一方、タク君とコウキ君は、それまでに読んだまともな洋書は、Harry Potter and the Prisoner of Azkaban1冊という状態でした。
(タク君とコウキ君が Harry Potter and the Prisoner of Azkaban をあっさりと読み通した経緯は別の記事で紹介します。)
そのような二人にも楽しんでもらうことを最優先に考えた結果が Never Let Me Go だったのです。
もっとも、僕自身が楽しめるかどうかの方が重要な判断基準でしたが。
なぜ、Never Let Me Goなのか
最初の読書会、冒頭での反応は、正直に言えば、こうでした。
ヒデ:「はじめの何章かを読んでみてどうでしたか?」
タク:「淡々としていて、何を言いたいのかわかりにくく、ちょっと読みにくいです」
コウキ:「面白さがまだわからなくて、不安です」
ヒナ:「実は私も、昔途中で止めてしまった作品です。このまま読み続けることができる自信がないです。」
ヒデ:「ヒナさんまで!?」
……ここまで揃うと、むしろ清々しい。
しかし、だからこそ思います。
この作品の“本当の凄さ”を、ゼロから体験できる。
それは、既読の僕からすれば、少し羨ましいほどの贅沢です。
これは、僕も、しっかりと、まず、Never Let Me Go のスゴさ、カズオ・イシグロの偉大さを伝えなければと腹をくくりました。
以下が、当時の僕が3人に何とか Never Let Me Go を読んでもらいたくて説明した内容です。僕は、英語読書を英語のお勉強と結びつけることを心から憎んでおり、以下、勉強をからめた若干心にもない内容も含まれていますが、僕の必死さを感じていただければ幸いです。
イシグロの英語という「奇跡」
タク君、コウキ君、ヒナさんのように、非常に熱心に英語を学ぶ若い世代が参加してくださっている以上、この読書会に参加するメリットとして、楽しみに付随して、若干ですが英語の勉強になる側面があることを指摘させていただきます。
(注:ヒデは英語を楽しむことしか考えておらず、以下は、三人を説得するための方便)
あくまで、楽しみが主でありますが、イシグロの文章を読むと、不本意ながら英語の勉強になってしまう側面があるのです。
日本人としてイシグロの英語をお手本にすればいい
カズオ・イシグロといえば、1989年に「日の名残り」でブッカー賞を受賞し、英文学界の頂点にたった上、2017年にノーベル文学賞を受賞して世界文学の頂点を極めた、現在有数の文豪であることは論をまたないところです。
まず、特筆すべきは、カズオ・イシグロが日本人(この際国籍はどうでもいいです)であるということです。
6歳の頃にイギリスに移住し、それから英語を身につけているということですが、6歳って相当日本語が出来るようになっていて、物事を日本語で考えるようになっている年頃ですから、当時のイシグロは純然たる日本語ネイティブだったわけです。
つまり、イシグロは、第二言語として、英語を学び、その後、英文学界の頂点にたったということなのです。
英作文を、「非英語ネイティブが第二言語として学習した英語を用いて作文すること」と定義すると、イシグロのやっていることはまさに「英作文」そのものです。
そうすると、カズオ・イシグロは日本人でありながら英作文界の帝王に上り詰め、さらには英語ネイティブを超えてしまった人物ということになり、若い皆さんがお手本とするべき日本人と言えるのではないでしょうか。
僕は、英検やTOEIC、TOEFLにおける英作文の試験がどんな内容なのかは知りませんし、興味もありませんが、少なくともカズオ・イシグロと同程度のクオリティーの英文を提出しておけば圧倒的成績となることは自明でしょう。なんせ、ブッカー賞やノーベル賞を取れちゃう英語なんですから一般的な試験ではカンストしますよね。
その上で、読めばわかりますが、イシグロの英語は驚くほどシンプルです。語彙も平易で、文章はものすごく読みやすいです。純粋英語ネイティブの英語作家の文章とはこの点でかなり違いがあるように感じます。
しかし、そのシンプルさにもかかわらず、イシグロの英文は、他の同世代の英語作家を寄せつけない圧倒的な深みを有しています。
イシグロの文章を読むと、そこからは、明らかにイシグロと感じさせる非常にユニークな雰囲気を感じ取ることができ、読者は他の作家からは感じ取ることができない独特の哀愁を感じることになります。
日本語がベースにあるという仮説
なぜ英語ネイティブでないイシグロにこんなことが可能だったのか?
僕は一つの仮説を有しています。
僕が、勝手に、イシグロの文章に匹敵すると考えている英語作品があります。
それが村上春樹(ハルキ・ムラカミ)作品の英語訳です。
(最初の課題図書に村上春樹作品を選ばなかったのには理由がありますが、その点はいずれ別の記事で紹介します。)
ムラカミの作品は、オリジナルが日本語であるという点がイシグロと決定的に異なっていますが、いずれにせよ英語作品の根底に日本語があることが共通しています。
また、ムラカミ作品の英語訳もまた、イシグロ作品に匹敵するシンプルで簡易な表現となっています。
その上で、ムラカミ作品における英文もイシグロ作品と同様、極めて強力に読者の感情を揺り動かしてくるのです。
そこから導いた僕の仮説はこうです。
日本語の土台の上にシンプルな英文を形成すると純粋英語話者には再現できない独特の深みが生まれるのではないか。
つまり、日本人が日本語のベースの上に、基本的な英語を用いれば、イシグロのように、英作文能力において英語ネイティブを超え、英作文界の帝王になれるかもしれないということです。
僕は、英語を学ぶ気は全くないので、あまり気にしませんが、英語学習の効率を気にしなければならないのであれば、端的にイシグロ作品の英文を丸暗記してしまえばいいのではないでしょうか?
イシグロと同等の英作文ができるようになれば、シンプルな英語で英作文の試験をカンストすること請け合いです。
Never Let Me Go を楽しむために
などと、僕は、若い皆様に何とか Never Let Me Go を読んでもらおうと心にもない苦しい説明をしたのですが、僕の真意は、この作品をとにかく楽しむことにしかありませんでした。
そこで、この読書会について、僕が楽しむために次のように読書会の進め方を指定させてもらいました。
特定の段落の指定
ヒデ:Never Let Me Go を真に楽しむためには、イシグロの有するシンプルな英文がもつその圧倒的な深み、イシグロの英文の有する力の源を探っていく必要があると考えます。
そこで、しばらくの間、僕が所定の範囲内から特定の段落を指定します。
その上で、皆様が、本書を通し読みする際、指定の段落を初めて読んだ際に何を感じたか、率直な感想をお聞かせください。
難しいことは考える必要がなく、何を感じ、または感じなかったかを教えていただきたいと考えています。
既読の皆様も、できれば初心に帰り、初読時に一体何を感じたか思い出しながら再読いただけるとありがたいです。
ネタバレについて
ヒデ:Never Let Me Go 読書会においては、ネタバレについて少し厳密にコントロールしたいと考えています。
せっかく3人とも未読の状態なわけですから、何の先入観もなくイシグロの文章を読んでもらい、その時に皆さんが何を感じたかを知りたいのです。
Never Let Me Goはイシグロの代表作であり、多くの読者がその最高傑作であると評価し、僕もその評価に同意します。
しかしながら、その分、あまりにも有名な作品で、インターネットをはじめ、そこらじゅうにネタバレの危険が潜んでいますので、十分ご注意ください。
僕としては、まっさらな状態の初読時における感想を知りたいのです。
日本語訳を読んではいけない
イシグロ作品は決して日本語訳を読んではいけません。
本の種類によっては、日本語訳を参考にしながら英文を読むのもいいでしょう。しかし、イシグロ作品はダメなのです。
イシグロの英文が如何に魅力的であるかは、日本語では全くわからないですし、日本語によってその魅力が大幅に減殺されてしまうのです。それがどういうことかは読書会が進んで行けばわかります。
英語自体は非常に簡単ですから、どうぞ安心して英語にそのまま飛び込んでください。
僕は、皆さんに、イシグロのシンプルで美しく、圧倒的な深みを有する英文にまっさらな状態で触れて欲しいのです。
次回予告 冒頭第一段落の徹底検証
次回は、Part 1 Chapter 1 の冒頭一段落に関する議論を紹介します。
もしよければ、今この瞬間に、
Never Let Me Go https://amzn.to/4vknwKV
を手に取っていただき、冒頭第一段落だけでいいので、
静かな場所で、ゆっくり読んでみてください。
そのうえで、このブログの次の記事を読んでみてください。
わずか数行の中に、
- イシグロの技量
- この作品の核心
- 英語で読むべき理由
そのすべてが凝縮されています。
何も起こらないようでいて、
確かにとんでもない何かが始まる、その感覚をぜひ味わってください。




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