英語訳 村上春樹『1Q84』3 青豆はいったい何者なのか―Book 1前半から抱く「青豆の第一印象」スタイリッシュ英語読書会10【Book 1, Chapter 9まで言及】

スタイリッシュ英語読書会

(AIが生成したイメージ画像を使用しています。)

【この記事には、英語訳『1Q84』Book 1, Chapter 9までのネタバレを含みます。】

英語とフランス語の読書が大好き、ヒデです。

今回も、スタイリッシュ英語読書会2冊目の課題図書、英語訳村上春樹『1Q84』について、2025年5月に実施された第1回読書会における議論の続きを紹介していきます。

英語訳村上春樹『1Q84』2―謎のタクシードライバーと“There’s always only one reality.” スタイリッシュ英語読書会9【冒頭部分の内容に言及】
英語訳『1Q84』Book 1, Chapter 1 から、タクシーとタクシードライバーから青豆に対する印象的な警句についての第一印象に関する議論を紹介。様々な捉え方から『1Q84』世界の底知れなさが垣間見られる。

前回の記事では、Book 1, Chapter 1に登場する、あまりにも印象的で、どこか奇妙なタクシードライバーについて、メンバーたちに、その第一印象を共有してもらいました。

同じ英文を読んでいても、各自の第一印象は見事にバラバラで、さまざまな方向性が示されました。

英語読書会のおもしろさは、ここにあります。

ただし、タクシードライバーはあくまで入口にすぎません。

それ以上に気になるのが、もちろん、この女性。

青豆(Aomame)です。

Chapter 1では、渋滞した首都高速道路のタクシーから、特異な方法で目的地を目指す――。

さらに読み進めていくと――。

さらに驚くべき事実が、次々と明らかになっていきます。

いったい青豆とは何者なのか。

そして彼女は、いったいどんな世界へ足を踏み入れてしまったのか。

今回はBook 1前半に登場する具体的な英語表現を手掛かりに、メンバーそれぞれが抱いた

「青豆の第一印象」

を比較していきたいと思います。

取り上げるのは、青豆(Aomame)の視点で描かれる次の4章です。

  • Chapter 3 SOME CHANGED FACTS
  • Chapter 5 A PROFESSION REQUIRING SPECIALIZED TECHNIQUES AND TRAINING
  • Chapter 7 QUIETLY, SO AS NOT TO WAKE THE BUTTERFLY
  • Chapter 9 NEW SCENERY, NEW RULES

話し合うのは、あくまで第一印象。

決して「正解」を求めるものではありません。

論理的な根拠も、まったく不要。

「なんとなく」でいい。

むしろ、その直感こそ記録しておきたい。

物語を読み進め、読み終えたとき、青豆に対する印象がどう変化しているのかを比較することができるからです。

というわけで、今回も、

読書は絶対的に自由である。

各自の第一印象を絶対的に尊重する。

この方針のもと、青豆について、徹底して語り合ってもらいました。

(英語訳『1Q84』読書会のメンバーについてはこちらの記事を参照。)

英語訳村上春樹『1Q84』1 なぜ、2冊目で40万語の超大作に挑んだのか スタイリッシュ英語読書会8【ネタバレなし】
村上春樹『1Q84』英語訳の魅力、スタイリッシュ英語読書会2冊目の課題図書に選んだ理由、読書会の進め方、最初の、冒頭のタクシーに関するテーマ設定。

(スタイリッシュ英語読書会のコンセプトと初期メンバーの紹介はこちらを参照。)

スタイリッシュ英語読書会 Introduction
英語読書をスタイリッシュに楽しむための読書会の導入。英語で名作を深く読み解き、語り合うことの楽しさを追求し、教養として武器になる英語読書を目指している。読書が好きで、とにかく英語を楽しみたいという人に最適な英語読書コミュニティ。

(英語訳『1Q84』が英語多読初心者にとっていかにおすすめであるかはこちらの記事で詳しく説明しました。)

村上春樹『1Q84』英語訳—英語多読初心者に絶対おすすめ【ネタバレ無し】
村上春樹『1Q84』英語訳を、英語多読初心者にもっともおすすめの英語多読素材として紹介する記事。面白さ、英文の深み、難度をネタバレしないようにしながら説明する。

(Audibleの『1Q84』英語訳音源も非常におすすめです。)

Audibleで聴く村上春樹『1Q84』英語訳―英語多読多聴初心者におすすめする至高のリスニング音源
Audibleで聴く村上春樹『1Q84』英語訳―英語多読多聴初心者におすすめする至高のリスニング音源。英語多読多聴を始めたばかりの人に『1Q84』英語訳オーディオブックがおすすめの理由。青豆と天吾の声、オーディオブックの利用方法などを紹介。

Q4 青豆の「プロフェッショナル」としての能力

ヒデ:
Book 1, Chapter 7まで読み進めると、青豆が非常に特殊な技術と鍛錬を必要とする「仕事」を、プロフェッショナルとして遂行できる人物だとわかっていきます。

青豆の仕事場面

まずは、Chapter 3のこの場面。青豆がいきなり、仕事に入ります。

“Uh… Mr. Miyama …?” she ventured. “Excuse me, but I think you have something stuck to the back of your neck.”

この一言から直後の展開を最初に読んだとき、皆様どのように感じたでしょうか?

コウキ:
かなりびっくりしました。

Chapter 1の時点では、青豆は「何か重要な仕事に急いでいる女性」くらいに思っていました。

まさか、あんな仕事だったとは。

ヒナ:
私もびっくりしましたけど、同時に、

「え、そういう話なの!?」

となりました。

ここで一気にリアリティの種類が変わった感じがします。

ヒデ:
わかります。

Chapter 1だけ読むと、不思議ではあるけれど、まだ現実世界の延長線上でしたね。

東京の渋滞。

タクシー。

首都高速。

そこに少し奇妙なタクシードライバーがいる。

ところがChapter 3で、

急に現実離れした、フィクショナルな展開になる。

タク:
フィクション感が強まりましたが、一方で、青豆の特殊な技術について、かなり具体的に迫真性をもって説明されていることが怖いと感じました。

特に、

Stabbing the special point…

と始まる段落。

読んでいて、

「そんなこと、本当にできるの?」と思いましたが、妙な説得力がありました。

マイ:
現実的にはあり得ないと思います。

ヒナ:
かなりファンタジックな能力ですよね。

現実にあり得るかのように淡々と説明されるから、とても不思議な感覚になります。

ヒデ:
そこが『1Q84』のおもしろいところかもしれません。

文章自体は淡々としている。

青豆本人も淡々としている。

だから読者まで、

「なるほど、そこをこうすれば……」

って納得しかける。

いやいや。

納得してはいけない。

どういう世界観なのか、もう少し疑いながら読み進めてみる必要があると感じます。

仕事を終えて

しかし、青豆の異常性は「特殊な技術を持っている」というだけではありません。

僕にとって特に印象的だったのはChapter 5です。

非常に重大な結果をともなう仕事だったことから、疲れを癒したいというのはわからないでもない。

ところが、その様子が普通ではない。

仕事を終えた青豆は、強い欲求に突き動かされ、高級ホテルのバーで知り合ったビジネスマンと一夜を共にする。

印象的なのが、その直後に関する描写で、次の文章で始まる段落です。

When they were finished and she was caressing the back of the man’s exposed neck as …

青豆の意識は、自分が「仕事」で使用しているあの能力へと向かっていきます。

つまり青豆は、能力を持っているだけではない。

その能力を使うことへの衝動を抱えながら、自分自身で制御している。

ここが怖い。

そして、同時に、プロフェッショナルとしての格好よさにもなっているように思います。

では、せっかくですから男性陣に、Chapter 5 の青豆について聞いてみましょう。

青豆は魅力的な女性でしょうか。

もし自分があのビジネスマンの立場だったら?

コウキ:
魅力的だとは思います。

自分は大学生なので……、青豆に声を掛けられることはないとは思うのですが、あれだけ積極的に来られたら、たぶん付いていってしまいます……。

ヒデ:
なるほど。社会人1年目のタク君はいかがですか。

タク:
僕も、青豆のような魅力的な女性からあれだけ押されたら、まあ付いていくと思います。

ヒデ:
ですよね。

青豆が男性から見て魅力的な女性であることは間違いないでしょう。

悪魔的な魅力をもっているといっていい。

少なくともバーで誘われた時点では、彼女が首の後ろの「special point」に詳しいなんて知らないわけですから。

女性陣からは異論がありそうですね……。

マイ:
……こんな女はいません。

男の妄想です。

ヒナ:
そして、そのような妄想に魅力を感じている男性を私は軽蔑します。

ヒデ:
コウキ君、タク君。

どうやら我々はまずいことを言ってしまったようです。

タク:
ヒデさんが悪いんですよ!

僕は、質問に答えただけです。

コウキ:
理不尽です……。

ヒデ:
まあ、しかし、この男女での印象の差もおもしろいのではないでしょうか。

男性読者から見ると「危険だけれど魅力的」。

女性読者から見ると「ファンタジックであり得ない女性像」。

同じ青豆を見ても、人物造形そのものに対する距離感がかなり違います。

そして、青豆の「プロフェッショナル」という側面を考えるうえで、もう一人無視できない人物がいます。

The dowager の存在

The dowager(老婦人)です。裕福な未亡人を示す英単語です。

タク:
僕は、雇い主としてのthe dowagerの存在が印象的でした。

Chapter 7の会話です。

“I can’t imagine finding anybody to take your place.”

それに対して青豆は、

“You might not find a person that easily, but you could probably find a way without too much trouble,” Aomame noted.

と言います。

the dowager と青豆との信頼関係、

そして、青豆は、the dowager を、「(青豆のような特殊な能力を有する人物を)それほど大きな困難なく見つけることができるだろう」と評価しています。

the dowager はいったい何者なのか。

さらに、架空世界感が強まったように感じました。

ヒデ:
なるほど。

the dowagerとの関係は、単純な「雇用主と仕事人」だけでは説明しきれない。

二人の会話には奇妙な信頼関係がある。

まあ、非常に重大な結果を伴う仕事ですから、信頼関係がなければとてもできない。

むしろ、どれほど強い信頼関係なのか。

このような恐ろしい仕事を遂行させるthe dowager はどれほどの力をもつ人物なのか。

青豆の存在する世界の現実感が遠のいていく感じがします。

Q5 青豆が感じ始めた「世界の違和感」

ヒデ:
それでは、次のテーマに移りましょう。

Book 1 前半を読んでいて感じるのは、青豆というキャラクター自体の違和感だけではありません。

読み進めるにつれて、

世界のほうが、よりおかしくなっていく。

Chapter 9までの青豆は、自分を取り巻く世界に少しずつ違和感を覚え始めます。

そこで皆さんにうかがいたい。

青豆が「世界の違和感」を認識していることが伝わる英文の中から、最も印象に残ったものはどれでしょうか。

なぜ、このタイミングで青春の記憶なのか

マイ:
私は、まずここを引用したいです。Chapter 3です。

The summer night, the narrow bed, the faint smell of perspiration. The words they spoke. The feelings that would not take the form of words. Forgotten promises. Unrealized hopes. Frustrated longings.

首都高速道路の非常階段を下りるという、特異な状況にあって、突如、なぜ学生時代の思い出が頭をよぎるのか。

しかも、その描写が……

美しい!

夏の夜。

狭いベッド。

言葉にならなかった感情。

忘れられた約束。

実現しなかった希望。

満たされなかった思い。

すごく美しくて、甘酸っぱい青春の記憶が鮮やかに浮かんでくる。

村上春樹の英語訳ならではの、洗練されたリズムも感じます。

でも、だからこそ思う。

なぜ、ここ?

ヒデ:
確かに。

首都高から非常階段を下りている場面で、学生時代の友人を思い出す。

明らかに不自然なタイミングですね。ものすごく急いでいたから、このような非常手段に出たはずです。

普通なら、

「急がなければ」

「転ばないようにしよう」

「うまく出られるのか」

と、あせりや不安の感情に支配されるような状況のはず。

ところが、突然、人生の奥底に沈んでいた記憶が浮上してくる。

物理的には、青豆は単に高速道路から地上へ降りているにすぎない。

しかし、物語としては、ある世界から別の世界へ境界線を越えようとしている。

その瞬間に、忘れていた過去が、異常なほどに美しい情景として浮かび上がってくる。

読者はまだ理由がわからないまま、ただただ、感覚的なものとして

「何かが変わった」

という直感だけを先に与えられる。

このあたりが村上春樹作品の有する非常にユニークな特徴なのではないでしょうか。

警察官の「拳銃」に気づく青豆

コウキ:
自分は、やはり青豆が感じた最初の具体的な違和感が気になります。

Chapter 3 通りすがりの警察官を見た場面です。

The jacket was the normal deep navy blue, but its cut was different: the design was more casual, less tight fitting, and in a softer material, the lapels smaller, even the navy color a touch paler. His pistol, too, was a different model.

青豆は、警察官が従来のリボルバーではなく、大型のオートマチックを携帯していることに気づきます。

でも自分は、

その違和感に気づいた青豆自身に違和感を持ちました。

ヒデ:
なるほど。

世界そのもの以上に青豆のほうが気になる。

コウキ:
そうです。

自分だったら警察官とすれ違っても、拳銃のモデルなんて絶対にわかりません。

「警察官がいた」で終わります。

なぜ青豆は拳銃に目が行くのか。

青豆は警察と何か関係があるのか。

そして、なぜ拳銃が変わっているのか。

違和感が二重なんです。

ヒデ:
非常におもしろい指摘ですね。

「世界が変わった」という情報を読者が認識できるのは、そもそも青豆の観察力の高すぎるからといえそうです。

普通の人物だったら、

「なんか制服、ちょっと違う?」

で終了してしまう。

しかし青豆は、服のカッティングから拳銃まで見る。

だから、異常な世界を検知するセンサーとして、異常に鋭敏な青豆の視点が設定されている。

プロフェッショナルとしての能力と、「世界の変化に気づく人物」であることが、ここでつながってくる気がします。

歴史そのものが変わっている

タク:
僕はChapter 9です。

青豆が、世界に違和感を覚え、過去の新聞記事を調べていくところ。

NHKの集金人が大学生を刺した事件についての記事があります。

On October 12, in a residential section of the Itabashi Ward of Tokyo, an NHK subscription fee collector (aged fifty-six) became involved in a shouting match with a college student who refused to pay.

そして、さらに決定的なのが、

YAMANASHI GUNFIGHT WITH RADICALS: 3 OFFICERS DIE

という見出しです。

ヒデ:
ここまで来ると、「制服がちょっと違う」というレベルではありませんね。

タク:
そうなんです。

最初は小さな違和感だったのに、調べるほど「自分の記憶している歴史」と「この世界の歴史」が合わなくなっていく。

それが怖い。

ヒデ:
語りが非常に巧妙ですね。

最初は制服。

拳銃。

ニュース。

過去の事件。

青豆が一つずつ確認していくたびに、読者の足元から現実が少しずつ剥がれていく。

「自分がおかしいのか。それとも世界がおかしいのか」

という疑問を、青豆と読者が共有する構造になっているように感じます。

そして世界に名前をつける

ヒナ:
私はやはりChapter 9のラストです。

青豆が自分の置かれている状況を分析したうえで、

1Q84.
That was where she was now.

と結論づける。

この状況でパラレルワールドにお洒落な名前までつける青豆の強さに感銘を受けました。

ヒデ:
青豆の精神的な強さは驚異的ですよね。

普通なら、

「どうしよう」

「元の世界に戻れるの?」

「自分の頭がおかしくなってしまったのか?」

となりそうですよね。

青豆は違う。

世界がおかしい。

自分の記憶と現実が一致しない。

では、とりあえず名前をつけよう。

ヒナ:
そこが強いですよね。

理解できない状況を、理解できないまま放置しない。

ヒデ:
しかもネーミングセンスが良すぎる(笑)。

年号を使うという発想が面白い。おそらく、ジョージ・オーウェルの影響はあったでしょう。

しかし、1984としてしまうと、ジョージ・オーウェルの1984と混同してしまいますね。

だから、

1Q84。

ヒナ:
メチャクチャおしゃれじゃないですか?

QはquestionのQなのでしょうか。

世界の正体はわからない。

けれど、自分が今いる場所について、とりあえず自分の言葉で定義する。

強さだけではなく、センスの良さも感じます。

ヒデ:
本当にそうですね。

世界が自分の思いどおりにならなくても、パニックにはならない。

状況を観察する。

情報を集める。

仮説を立てる。

名前をつける。

そして、新しいルールを見つけて生きていく。

Chapter 9のタイトル、

NEW SCENERY, NEW RULES

そのものですね。

青豆って、結局どんな女性?

今回の読書会を通じて、青豆というキャラクターの魅力が、かなり立体的に見えてきました。

強く、魅力的。

とてつもなく有能。

冷静。

観察力が鋭い。

肉体的にも精神的にも鍛えられている。

自分の仕事に対する独自の倫理観を持ち、自分の中にある危険な衝動さえ制御する。

一方で、ヒナさん、マイさんが指摘したように、青豆という女性キャラクターには多分に村上春樹的なファンタジーが入り込んでいて、「現実の女性像」から乖離している部分もあるのかもしれません。

マイ:
魅力的なキャラクターであることと、「こんな女性いない」と思うことは両立します。

私も、青豆が魅力的なキャラクターであることに異論はありません。

フィクションなんだから、現実にいなくてもいいですし。

ヒデ:
少なくともBook 1前半の時点で、青豆は強烈な存在感を放っていることは誰の目にも明らかでしょう。

そして僕が今回あらためて興味深いと思ったのは、

青豆自身の異常さと、世界の異常さが、同時進行で明らかになっていくこと。

特殊な仕事をする青豆。

拳銃のモデルに気づく青豆。

過去の事件を調査する青豆。

そして、自分が知っていた1984年とは微妙に違う世界に「1Q84」と名前をつける青豆。

青豆だからこそ、この世界の異常さを発見できたのではないか。

しかし、その意味するところは――。

まとめ――「1Q84」と名づけた瞬間、物語が動き出す

ヒデ:
Chapter 1の時点では、青豆は「渋滞した首都高から非常階段を使って降りる、ちょっと変わった女性」でした。

Chapter 3では、

「え、この人、何者?」

となる。

Chapter 5では、

「いや、かなり危険な人なのでは?」

となる。

Chapter 7では、その背後にある人間関係と彼女なりの倫理観が見えてくる。

そしてChapter 9。

とうとう青豆は確信します。

世界そのものが変わっている。

そして、その世界を彼女は、

1Q84

と名づける。

この瞬間、タイトル『1Q84』の意味が読者に明らかとなります。

英語訳で読むと、村上春樹作品特有の簡明で美しいセンテンス、淡々とした静かな描写が非常に読みやすく、それでいて突然現れる奇妙な出来事との落差が鮮明です。

1Q84.

That was where she was now.

という簡潔さ。

簡明な英文が、読者に、青豆と一緒に別の世界へ踏み込んだ感覚を、これ以上なく鮮明に味わわせてくれる。

英語多読をしている方は、ぜひこの感覚をKindle版の英語原文で体験しながらこのブログ記事を読んでほしいと思っています。

『1Q84』は長い。

しかし、これだけのクオリティの英文をそれだけ長く味わえる。

英語多読を、単に英語のお勉強の時間とするのではなく、

青豆と天吾を交互に追いかけながら、「この二つの物語はどこでつながるのか」と考え続ける時間とすれば、

圧倒的に楽しい時間となると思いませんか?

Kindleなら、気になった英文にその場でハイライトを入れ、あとから検索して読み返すこともできます。

今回紹介した文章も、ぜひ実際のKindle英語訳『1Q84』の文脈の中でハイライトしてみてください。

「英語で40万語近い長編なんて無理」ではなく、「40万語近くも、この世界を楽しめる」。

そう思えたら、もうこちらのものです。

青豆が首都高速道路の非常階段を降りたように、最初の一歩を踏み出してみてください。

その先に待っているのは――

1984年ではありません。

1Q84です。

次回――もう一人の主要人物、天吾という男性に対する第一印象は?

さて。

青豆をここまで語った以上、もう一人の主要人物を放っておくわけにはいきません。

天吾(Tengo)。

次回は視点を青豆から天吾へ移します。

Chapter 8 Tengo MEETING NEW PEOPLE IN NEW PLACES

までを検討対象とします。

そのうえで、僕は、天吾について、2つのテーマを設定しました。

Q6 天吾の小説家としての天分について

まず考えたいのが、天吾の小説家としての才能です。

天吾は小説家を志し、その才能ゆえに、やがて極めて特殊な秘密のプロジェクトに関わることになります。

天吾の小説との向き合い方。

そして、そのプロジェクトに対する葛藤。

その心理描写には、青豆とはまったく異なる種類の緊張感があります。

そこで、

天吾の小説家としての描写、あるいはプロジェクトに向き合う描写の中から、最も印象に残った箇所を一つ選び、その理由を語ってもらいます。

そしてもう一つ。

Q7 天吾の幼少期について

天吾という人物に深い影を落としているのが、NHKの集金人だった父親との関係です。

なぜ天吾は現在の天吾になったのか。

その輪郭を理解するためには、彼の幼少期を避けて通れません。

父親との関係を描いた場面の中から、最も印象に残った箇所を一つ選び、その理由を語ってもらいます。

Q8 とりあえず、誰が主人公?

そして最後に、今だからこそ聞いておきたい質問。

まだBook 1, Chapter 8までです。

何もわかりません。

だからこそ聞いておきたい。

あなたにとって、現時点で『1Q84』の主人公は青豆か。それとも天吾か?

あなたにとって、物語の中心にいると感じるのはどちらなのか。

論理的な理由は必要ありません。

暫定的な第一印象で十分です。

この答えを今のうちに記録しておけば、物語が大きく動いた後、

「最初はこんなふうに読んでいたのか!」

と振り返ることができます。

さて。

青豆について散々語った僕たちの視線を、次回は天吾へ。

青豆とはまったく違う静けさをまとった、この男はいったい何者なのか。

英語訳『1Q84』読書会、まだBook 1前半です。

先は、とてつもなく長い。

だからこそ――まだまだ楽しめます。

ご期待ください。

英語訳村上春樹『1Q84』4 天吾の第一印象―最初は全員が『青豆』を主人公と思っていた―スタイリッシュ英語読書会11【Book 1, Chapter 8まで言及】
『1Q84』英語訳Book 1, Chapter 8 までを読んで受ける天吾の第一印象。小説家としての才能という側面と幼少期の記憶という側面から検討する。英語訳村上春樹『1Q84』4番目の記事。スタイリッシュ英語読書会11番目の記事。

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