英語訳村上春樹『1Q84』8 牛河という男―その不可解な存在と目的 スタイリッシュ英語読書会15【Book 2, Chapter 2, 6に言及】

村上春樹英語訳

(AIが生成したイメージ画像を使用しています。)

【この記事では、英語訳『1Q84』Book 2, Chapter 2, 6 に言及します。】

英語とフランス語の読書が大好き、ヒデです。

前回の記事では、Book 2前半の青豆視点から、

青豆に課された最大にして最後の仕事

について検討しました。

英語訳村上春樹『1Q84』7 青豆、最大にして最後の仕事へ―銃を手にした青豆とその不可解な恋 スタイリッシュ英語読書会14【Book 2, Chapter 7まで言及】
英語訳『1Q84』のBook2, Chapter 7までにおける青豆視点の章を読んで、最大にして最後の仕事に向かう青豆に対する、直感的な感覚を議論する。銃を手にしたこと、魅力的な青豆のキャラクターと比較して不可解な恋愛感情、不気味な相手。青豆のストーリーがスリリングに加速する。英語訳村上春樹『1Q84』7番目の記事、スタイリッシュ英語読書会14番目の記事。【Book 2, Chapter 7までのネタバレを含む。】

青豆の有する強さと危うさ、そして不可解な恋。

SakigakeのLeader。

青豆視点の物語が極めてスリリングに加速してきました。

今回、いったん、視点を青豆から天吾へ移します。

検討対象は、天吾視点で語られる次の2章です。

  • Chapter 2
    I DON’T HAVE A THING EXCEPT MY SOUL
  • Chapter 6
    WE HAVE VERY LONG ARMS

突如として天吾の前に現れた男。

牛河(Ushikawa)。

あまりにも怪しい。

怪しいだけならまだいい。

何をしたいのかが、わからない。

今回の読書会では、この不気味な男の存在に対する印象、

その不可解な行動の目的に対して抱いた感覚、

について、徹底して議論してみました。

これほど不気味な男について、果たして論理的な説明をなしえるのか。

非常に難解な問題である予感がします。

難しいことを考えても仕方がありません。まずは物語を楽しみましょう。

そこで、今回も、話し合うのは、あくまで各自の感覚と直感

決して「正解」を求めるものではありません。

論理的な根拠も、まったく不要。

「なんとなく」でいい。

むしろ、僕は、メンバー各自が抱いたその感覚こそを知りたい。

錚々たる読書家達がこの不気味な男をどのようにとらえるのか――。

というわけで、今回も、

読書は絶対的に自由である。

各自の第一印象を絶対的に尊重する。

この方針のもと、思う存分、メンバーたちの直感を語り合ってもらったところ――、

驚くべき仮説が提示されました。

それが正しいとすれば――。

牛河の不気味さそのものに、意味がある。

そんな可能性が見えてきたのです。

(Book 1の議論、英語訳『1Q84』読書会のコンセプトや、メンバー紹介についてはこちらの記事を参照。)

英語訳村上春樹『1Q84』1 なぜ、2冊目で40万語の超大作に挑んだのか スタイリッシュ英語読書会8【ネタバレなし】
村上春樹『1Q84』英語訳の魅力、スタイリッシュ英語読書会2冊目の課題図書に選んだ理由、読書会の進め方、最初の、冒頭のタクシーに関するテーマ設定。

(スタイリッシュ英語読書会のコンセプトと初期メンバーの紹介はこちらを参照。)

スタイリッシュ英語読書会 Introduction
英語読書をスタイリッシュに楽しむための読書会の導入。英語で名作を深く読み解き、語り合うことの楽しさを追求し、教養として武器になる英語読書を目指している。読書が好きで、とにかく英語を楽しみたいという人に最適な英語読書コミュニティ。

(英語訳『1Q84』が英語多読初心者にとっていかにおすすめであるかはこちらの記事で詳しく説明しました。)

村上春樹『1Q84』英語訳—英語多読初心者に絶対おすすめ【ネタバレ無し】
村上春樹『1Q84』英語訳を、英語多読初心者にもっともおすすめの英語多読素材として紹介する記事。面白さ、英文の深み、難度をネタバレしないようにしながら説明する。

(Audibleの『1Q84』英語訳音源も非常におすすめです。)

Audibleで聴く村上春樹『1Q84』英語訳―英語多読多聴初心者におすすめする至高のリスニング音源
Audibleで聴く村上春樹『1Q84』英語訳―英語多読多聴初心者におすすめする至高のリスニング音源。英語多読多聴を始めたばかりの人に『1Q84』英語訳オーディオブックがおすすめの理由。青豆と天吾の声、オーディオブックの利用方法などを紹介。

ヒナ:あまりにも「モヤッとする」牛河の外観

ヒナ:
まず私は、牛河の外見が気になります。

牛河は、Chapter 2で、天吾の勤務する予備校に突然現れるわけですが、牛河の外見に関する描写が、ものすごく細かい。

しかも、徹底的にネガティブです。

マイ:
よくここまで人の外見を悪く書けるよね。

ヒデ:
いやはや、本当ですね。

美しいものを美しく描写するのも作家の力量ですが、不快なものをこれでもかというほど不快に描くのもまた文章力です。

ネガティブな人物描写を書かせた場合、村上春樹の右に出る者はいないのではないか――。

そんな気がしてきます。

ヒナ:
確かにそうです。

でも、私は単に「醜い人」として描いているだけではないような気がするんです。

牛河の外観が、ものすごくモヤッとする。

ヒデ:
ヒナさんが「モヤッとする」というのは、どこかで聞いたことがありますね。

ヒナ:
すごく嫌な感じがする。

ちょっと、この二つの文章を見てください。

まず、Chapter 2から。

The large crown of his head formed an abnormally flat bald area with lopsided edges.

そして次にChapter 6から。

His strange face and flat, misshapen head came to Tengo’s mind automatically.

気になるのが、

lopsided

misshapen

です。

どちらも洋書を普通に読んでいて、それほど頻繁に遭遇する形容詞ではないと思います。

ヒデ:
lopsided は、左右が不均衡で、どこか一方に傾いている感じ。

misshapen は、形が崩れている、正常な形ではない。

単なる ugly とは違いますね。

あまり、洋書では見かけません。英語訳『1Q84』は英文は簡単なので、こういう特殊な英単語がすごく浮き出て見えます。

あれ、そういえば、この二つの英単語、どこかで読んだことがあるような……。

ヒナ:
そうなんです。

misshapen については、天吾が日曜日について抱いているイメージとして、

英語訳村上春樹『1Q84』4 天吾の第一印象―最初は全員が『青豆』を主人公と思っていた―スタイリッシュ英語読書会11【Book 1, Chapter 8まで言及】
『1Q84』英語訳Book 1, Chapter 8 までを読んで受ける天吾の第一印象。小説家としての才能という側面と幼少期の記憶という側面から検討する。英語訳村上春樹『1Q84』4番目の記事。スタイリッシュ英語読書会11番目の記事。

lopsided については、青豆の見た夜空で、

英語訳村上春樹『1Q84』5 夜空を見上げた青豆―決定的に変わっていた世界―スタイリッシュ英語読書会12【Book 1, Chapter 19まで言及】
『1Q84』英語訳Book 1, Chapter 19 までを読み、登場した二つの決定的要素についての印象を検討。夜空の光景とLittle People。英語訳村上春樹『1Q84』5番目の記事。スタイリッシュ英語読書会12番目の記事。

それぞれ、既に用いられていたのです。

牛河の頭は平たく、歪んでいて、左右が不均衡。

それを読んだ瞬間、私は、青豆が夜空を見上げたときに感じた、あの感じを思い出しました。

もちろん、牛河と夜空に直接の関係があるかはわかりません。

でも、抽象的な共通項があるように感じる。

本来あるべき形から、何かがズレている。

そこがすごく不吉でモヤッとします。

ヒデ:
しかも、それが、天吾にとっての負の感情の根源にある「日曜日」の感覚とも通じている。

これは偶然とは思えませんね。

ヒナ:
そうなんです。

そして、牛河の外見について、具体的な人物像を頭の中に作ろうとしても、うまくイメージできないんです。

だから、モヤッとする。

ヒデ:
それでも、ヒナさんがの牛河像について、あえてどのようなイメージかを説明しようとするとどうでしょう?

ヒナ:
……。

笑ゥせぇるすまん。

ヒデ:
なるほど!

不気味な感じが共通するかもしれませんね。

いったい、この男は何を売りつけようとしているのでしょうか?

タク:そもそも牛河は、何をしたい?

タク:
そこなんです。

牛河は何をしたいのか。

Chapter 2で牛河は、

New Japan Foundation for the Advancement of Scholarship and the Arts

という、やたら長い名前の団体を名乗ります。

ヒデ:
名前が長ければ長いほど立派に見える、という発想でしょうか。

タク:
逆に胡散臭いです。

そして、天吾にこんな提案をします。

If you will be so good as to sign the necessary documents, the three million yen will be transferred electronically into your bank account immediately. You will be able to take six months or a year’s leave from this cram school and devote all your energies to writing.

300万円を渡す。

予備校を半年か一年休む。

そして小説執筆に専念しろ。

普通に考えると、ものすごく好条件なんですよね。

ヒデ:
小説家を目指している人間からすれば、願ってもない話にも見えます。

生活費を気にせず、半年から一年間、創作だけに専念できる。

いわば、時間そのものを300万円で買ってくれるわけです。

コウキ:
自分なら絶対受け取らないです。

ヒデ:
なぜでしょうか?

コウキ:
怖すぎます。

知らない男が突然職場に来て、「あなたのことは調べています。300万円あげるので仕事を休んで小説を書いてください」と言う。

そんなの、300万円もらった瞬間、詐欺まがいの何かに巻き込まれるに決まっているじゃないですか。

マイ:
そうだよね。

本当に「いい小説を書いてほしい」だけなら、もっとやり方があると思う。

ヒデ:
たとえば?

マイ:
もっと感じのいい人を行かせればいいじゃない。

なんなら、きれいな女性でも差し向けて、

「あなたの小説、ぜひ読みたいです」

とか言わせた方が、よっぽどやる気が出るでしょ。

ヒデ:
それは……。

確かに!俄然やる気が出ますね!!

タク:
牛河よりは確実に執筆が進みそうです。

コウキ:牛河は、どこまで知っている?

コウキ:
自分が、それ以上に気になるのが、

牛河が天吾について、どこまで知っているのか

という点です。

Chapter 2で、牛河はさらっとこんなことを言います。

For example, you seem to have—how should I put this?—some sort of connection with Miss Eriko Fukada, the author of Air Chrysalis.

ふかえりとの関係を知っているうえに、これはおそらく、小松の企みまで把握している。

ヒデ:
これは嫌ですね。

天吾にとって『Air Chrysalis』をめぐる一件は、表向きには知られてはならないことです。

にもかかわらず牛河は、天吾とふかえりとの間に何らかの「connection」があることを知っている。

タク:
「何か関係があるようですね」

という言い方がいやらしいですね。

コウキ:
怖いんです。

こちらは知っている。さあ、どこまで知っていると思いますか?

情報量に差を作って、それ自体を圧力として使っているように見えます。

ヒデ:
なるほど。

情報そのものが武器になっている。

これは交渉として非常に嫌なやり方ですね。

相手が何を知っているのかわからない。

そうなると天吾は、非常に不安になるように思います。

しかし、圧力をかけて、不安にさせて、やろうとしていることは

300万円を受け取らせる。

牛河のやっていることはとてもチグハグに見えます。

マイ:年上の交際相手に、いったい何が起きた?

マイ:
私はChapter 6が怖かった。

牛河が電話してくる直前。

天吾のところに、交際相手である年上の既婚女性の夫から電話があります。

あの夫の電話、どう考えてもおかしいよね。

My wife will not be able to visit your home anymore, I believe. That is all I wanted to tell you.

ヒデ:
たしかに。これはおかしいです。

普通、不貞関係を知った夫が相手の男性に直接電話をする場面だとすれば、

「妻に何をした」

とか、

「二度と会うな」

とか、

感情的な言葉が出てきそうなものです。

マイ:
そう。

でも、この夫、ものすごく淡々としている。

怒っている感じでもない。

責めている感じでもない。

そして何より、これ。

My wife is irretrievably lost.

妻が irretrievably lost って何?

人間についてそんな言い方する?

ヒデ:
irretrievably

取り返しのつかないほどに、

失われてしまった。

……かなり異様な表現です。

タク:
死んだ、と言っているわけではないんですよね。

マイ:
そう。それで、

別れたとも言わない。

病気だとも言わない。

ただ、

irretrievably lost.

どういう言葉のチョイス?

怖すぎるんですけど。

ヒデ:
そして、その直後に牛河から電話が来る。

これは、天吾に限らず、誰でも牛河の影響を疑いたくなりますね。

牛河が天吾の私生活にまで手をまわしたのではないか。

ヒナ:「very long arms」が、黒幕を示している?

ヒナ:
そこで私は、前回の青豆の議論との関連でここが気になります。

Chapter 6で、牛河は電話で天吾にこう言います。

My client knows very well just how dangerous it is and what kind of danger it poses, and they have a degree of understanding regarding how to deal with the danger, which is precisely why we have tried to extend a helping hand to you.

牛河の背後に黒幕がいることを牛河自身がはっきり告げています。

そして、決定的なのがこの部分です。

To put it quite bluntly, we have very long arms—long and strong.

ヒデ:
very long arms.

これは、前回、ヒナさんが指摘していましたね。

ヒナ:
順番が前後してしまいましたが、前回、Chapter 7の青豆視点で私が気になると言った言葉と重なっています。

Sakigake側の人間であるBuzzcutは、

strong hearts and long arms

と言っていた。

そして実はその前の章で牛河が、

very long arms—long and strong

と言っていた。

これは偶然とは思えません。

ヒデ:
つまり――。

牛河の黒幕はSakigakeではないか。

ヒナ:
私はそう読みました。

少なくとも、この時点までの情報だけで考えるなら、その可能性はかなり意識させられます。

そうすると、牛河の行動は、単なる怪しい財団の活動ではなくなる。

牛河の行動の背後にSakigakeの意図がある。

そう考える必要が出てくると思います。

ヒデ:牛河は結局、何がしたい?

ここで僕には、大きな疑問が生じました。

仮に牛河の背後にSakigakeがいるとしましょう。

そうすると、牛河の行動にはSakigakeの意図があることになります。

では、Sakigakeは牛河を通じていったい何をしたいのでしょう。

単純に天吾に良い小説を書かせたいのであれば、牛河を派遣する必要などありません。

もっと感じのいい人間により、

もっと自然な方法で、

300万円を提示すればいい。

なんなら、マイさん指摘のとおり、魅力的な女性から、

「あなたの小説を読んでみたいです」

と言われた方が、天吾の創作意欲は倍増するかもしれない。

問題は――。

なぜ、牛河なのか。

です。

300万円という大金を出す以上、

「小説を書かせたい」

という意思はあるように見える。

しかし牛河という人間の不気味さ。

天吾について調査していることを意図的に匂わせる態度。

ふかえりとの関係への言及。

年上の交際相手をめぐる不可解な出来事。

そして、

we have very long arms.

という露骨な脅し。

これでは、創作を応援しているのか、妨害しているのかわかりません。

書かせたいのか。

書かせたくないのか。

牛河の行動が非常に矛盾しているように見えるのです。

ヒナ:小説を書かせたい。そのうえで――

ヒナ:
私は、そこは両立すると思います。

ヒデ:
どういうことでしょう。

ヒナ:
300万円は確かに大金です。

しかも牛河は、天吾が断ろうとしても簡単には引き下がらない。

脅しのような方法まで使って、半ば強制的に受け取らせようとしている。

ということは、

天吾に長編小説を書かせたい

という目的自体は、本当にあるのだと思います。

ヒデ:
はい。たしかにその通りだと思います。

ヒナ:
でも、

ただ小説を書かせればいいわけではない、

のではないでしょうか。

牛河は、天吾の心を乱している。

不安を与える。

自分が監視されているような感覚を与える。

ふかえりとの関係を知っていることを示す。

さらに、年上の交際相手まで突然失われる。

そうやって、

天吾の中にある負の感情を、意図的に増幅させている

と考えたらどうでしょう。

そして――。

その負の感情に満ちた状態で、小説を書かせたい。

ヒデ:
……。

なるほど!!

それは、たいへん腑に落ちます。

牛河の「不気味さ」そのものに意味があるのかもしれない

一見、牛河の行動は矛盾して見えます。

一方では300万円という大金を提示し、天吾に長編小説を書くための時間を与えようとする。

つまり、

創作を促進している。

しかし他方では、牛河自身の存在が天吾を不安にさせ、脅迫的な態度によって精神的な圧力を加えている。

つまり、

創作を阻害しているようにも見える。

ところが、ヒナさんの仮説に立つと、この二つが一つになります。

黒幕――ここでは仮にSakigakeとしておきましょう――には、

天吾に小説を書かせる必要がある。

しかし、

ただ平穏な環境で平穏な小説を書かせるだけでは足りない。

天吾の内側に、

不安。

喪失。

恐怖。

疑念。

怒り。

孤独。

そうした負の感情を蓄積させる。

そして、その状態で小説を書かせる。

そう考えるなら、

300万円と牛河は矛盾しない。

300万円は、天吾を机に向かわせるための装置。

牛河の不気味さは、その机で書かれるものを変質させるための装置。

牛河が交渉役として「不適切」なのではない。

むしろ、

牛河でなければならなかった。

そう考えることさえできます。

――非常に面白い。

牛河という人物は、単に「悪役らしい不気味な男」として造形されているのではない。

その不気味さ自体が、物語の中で機能を与えられている可能性がある。

しかし――なぜ「それ」が必要なのか?

ところが。

一つの疑問に説明がついた瞬間、

『1Q84』は必ず次の疑問を用意しています。

仮にヒナさんの仮説が正しいとしましょう。

黒幕は天吾に小説を書かせたい。

しかも、平穏な状態ではなく、

強い負の感情を抱えた状態で。

では――。

なぜ?

天吾がこれから書こうとしている長編小説に、

いったい何の意味があるのでしょう。

そして、

天吾の感情が、その小説に反映されることに、

いったいどんな意味があるのでしょう。

そもそも『1Q84』において、

物語を書くという行為そのものが、僕たちが思っている以上の力を持っているのではないか。

そんな疑念が生じてきます。

ふかえりが語った物語を、天吾が書き直した『Air Chrysalis』。

その作品に呼応するかのように、青豆の周囲では奇妙な出来事が次々と起こり始めました。

だとすれば――。

天吾が今、自分自身の手で書こうとしている長編小説は、

単なる「次回作」なのでしょうか。

僕には、どうもそうは思えません。

牛河という男が現れたことで、

「天吾は何を書くのか」

という問いそのものが、急速に不気味な意味を帯び始めたように感じるのです。

英語多読として読む『1Q84』――難しい単語こそ、物語の「違和感」になる

今回取り上げた、

lopsided

misshapen

irretrievably

といった単語。

英語多読をしていて、毎日のように遭遇する基本単語ではありません。

しかし、一発で記憶に定着したのではないでしょうか。

lopsidedmisshapen を知らなくても、

牛河の有する不気味で強烈なイメージが身体に沈んできたのではないでしょうか。

これが、僕が英語多読で大切にしている読み方です。

無味乾燥な単語帳で覚える英単語と、

牛河の歪んだ頭を思い浮かべながら覚える misshapen

どちらが忘れにくいかは、言うまでもありませんね。

しかも英語訳『1Q84』は、基本となる英文そのものは非常に簡単で読みやすい。

その中に、ときどき今回のような印象的な語彙が差し込まれる。

だからこそ、

物語を楽しみながら、語彙や英語表現の幅も自然に広げられる。

40万語を超える長編ですが、Book 2まで進んでしまえば、もう「40万語」という数字はほとんど意味を持ちません。

牛河は何者なのか。

Sakigakeの「long arms」はどこまで伸びるのか。

天吾は何を書こうとしているのか。

その答えを知りたくて、次のページを開いてしまう。

英語多読で最も強い推進力は、

「英語を勉強しなければ」ではなく、「続きを読みたい」

なのです。

もし、このブログを読みながら英語訳『1Q84』の世界に興味を持っていただけたなら、ぜひKindleで英語訳『1Q84』を開いてみてください。

辞書を引くために立ち止まるより、

牛河の「very long arms」から逃げるように、

そのまま先へ読み進めてみる。

気がつけば、このブログの読者の皆様も、圧倒的な深みを有する英文に飲み込まれていることでしょう。

次回予告――青豆、ついにthe Leaderと対面

次回。

再び視点は青豆へ。

検討するのは、

Book 2, Chapter 9、11。

ついに――。

青豆とthe Leaderが対面します。

青豆は、明確な目的を持ってLeaderのもとへ向かいます。

しかし、

青豆を待っていたのは、

彼女が予想していたような展開ではありません。

Leaderは、青豆に対して思いもよらない反応を示します。

そして二人の間で始まる、

長く、

静かで、

印象的な対話。

僕は、この青豆とLeaderの会話を読んでいて、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』における「大審問官(the grand inquisitor)」を思い浮かべました。

物語の進行がいったん静止したかのように見えながら、

そこで語られる言葉が、

作品世界そのものの根幹へ触れていく。

青豆とLeaderの対話もまた、英語訳『1Q84』全体を読み解くうえで、中心的・核心的な場面の一つなのかもしれません。

しかし――、

Leaderの言葉は、あまりにも謎に満ちています。

この世界で何が起きているのか。

青豆には、どのような役割があるのか。

そして、

天吾とは何者なのか。

一つ一つの発言が重大な意味を持っているように見える。

にもかかわらず、

簡単には意味をつかませてくれません。

そこで次回。

圧倒的な読解力を有するメンバーたちの力を総動員して、青豆とthe Leaderの対話の真髄に迫ります。

英語訳『1Q84』という巨大な迷宮。

どうやら僕たちは、いよいよその中心部へ足を踏み入れようとしているようです。

英語訳村上春樹『1Q84』9 標的と対面する青豆

ご期待ください。

(これまでの英語訳『1Q84』読書会の記事、一冊目の課題図書『Never Let Me Go』に関する記事はこちらをご覧ください。)

教養として武器となる英語読書を目指す読書会。スタイリッシュな英語図書をスタイリッシュに読みこなし、カッコいい読書歴を形成する。
社会の第一線で活躍し、深い教養と高い英語力を有するメンバー達が、より高みを目指し、村上春樹やカズオ・イシグロ、ジョージ・オーウェルなど、スタイリッシュな英語作品を、スタイリッシュに楽しんでいく。

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