英語訳村上春樹『1Q84』14 夜空を見上げた天吾――作者の世界に現れたもの スタイリッシュ英語読書会21【Book 2, Chapter 18まで言及】

小さな公園の滑り台の上からみた4分の3の大きさの月 スタイリッシュ英語読書会

(AIが生成したイメージ画像を使用しています。)

【この記事には、英語訳『1Q84』Book 2, Chapter 18までのネタバレを含みます。】

英語とフランス語の読書が大好き、ヒデです。

今回も、2025年9月に実施されたスタイリッシュ英語読書会、英語訳『1Q84』第4回の議論を紹介していきます。

前回の記事では、天吾の長い小説についての仮説を基に、これまでの青豆を振り返ってみました。

英語訳村上春樹『1Q84』13 青豆を振り返る――彼女の存在とは スタイリッシュ英語読書会20【ネタバレ厳重注意、Book 1からBook 2, Chapter 13までの全体に言及】
「天吾の書いている長い小説」について、ヒデが提示した仮説をもとに、Book 2, Chapter 13までの青豆を振り返る。多くの違和感が自然なものとして説明できるように思える一方でより複雑化する世界感。英語訳村上春樹『1Q84』13番目の記事、スタイリッシュ英語読書会20番目の記事。

青豆に関する不可解な事柄の数々が自然なものに見えてくる。

しかし、その一方で深まる謎もある――。

今回は、再び天吾に視点を戻します。

検討対象は、Book 2, Chapter 18までの天吾視点の章です。

  • 10 YOU HAVE DECLINED OUR OFFER
  • 12 MORE THAN I COULD COUNT ON MY FINGERS
  • 14 A PACKAGE IN HIS HANDS
  • 16 LIKE A GHOST SHIP
  • 18 THAT LONELY, TACITURN SATELLITE

まずは、10、12、14、16の4章について、各メンバーが気になった箇所を検討した後、Chapter 18の決定的な場面に進みます。

天吾が夜空を見上げた、その瞬間。

ついに天吾の前にもあの夜空の光景が姿を現します。

その意味するものはいったい何なのか。

作者であるはずの天吾を導くものは何か。

これまでとは全く異なる角度から謎が深まっていきます。

というわけで、今回も、

読書は絶対的に自由である。

各自の感想を絶対的に尊重する。

この方針のもと、あの仮説を批判的に検討しつつ、深まる謎に、作者天吾の視点から光を当てることを試みます。

(英語訳村上春樹『1Q84』読書会のコンセプトとメンバー紹介はこちら。)

英語訳村上春樹『1Q84』1 なぜ、2冊目で40万語の超大作に挑んだのか スタイリッシュ英語読書会8【ネタバレなし】
村上春樹『1Q84』英語訳の魅力、スタイリッシュ英語読書会2冊目の課題図書に選んだ理由、読書会の進め方、最初の、冒頭のタクシーに関するテーマ設定。

Chapter 10 YOU HAVE DECLINED OUR OFFER――ふかえりと天吾は、なぜ力を合わせる必要があるのか

ヒデ:
まずは、Book 2, Chapter 10

房総半島の療養所における父親との面会を終え、東京に戻った天吾。

彼のもとを、突然ふかえりが訪れます。

ふかえりは、天吾と一緒にいる必要があると告げるのです。

タク:
僕は、ふかえりが天吾のもとを訪れた理由が気になりました。

彼女は、こんなことを言っています。

“We should be together,” Fuka-Eri said. “Join forces.”

一緒にいて、力を合わせるべきだと。

でも、何のために?

ヒデ:
Join forcesというのは、共通の目的のために協力する、力を結集するという表現ですね。

問題は、二人が何を成し遂げようとしているのかです。

タク:
Chapter 13で出てくるPerceiverとReceiverという役割が関係しているのではないでしょうか。

英語訳村上春樹『1Q84』11 標的と語り合う青豆――The Leaderが明かす、世界の秘密 スタイリッシュ英語読書会18【Book 2, Chapter 13に言及】
英語訳『1Q84』の青豆視点であるBook2, Chapter 13を読んで、青豆とLeaderの対話について検討する。Leaderから提示される数々の問い。青豆から示される疑問。英語訳村上春樹『1Q84』11番目の記事、スタイリッシュ英語読書会18番目の記事。

Leaderの説明によれば、ふかえりがPerceiverで、天吾がReceiverでした。

二人が協力することで、何か特別なことができるのかもしれません。

コウキ:
自分もそんな気がします。

ただ、PerceiverとReceiverという言葉の意味がよくわからなかったんですよね。

Perceiverは何を知覚するのか。

Receiverは何を受け取るのか。

そもそも、受け取ったものをどうするのか。

ヒデ:
ふかえりが何を意図しているのかは分かりません。

並行して進行している青豆のChapter 11, 13で語られた天吾とふかえりの役割との関係が気になります。

ふかえりが天吾のもとを訪れたことには、何らかの必然性があるように思えます。

一方、Sakigakeにも動きがありました。

警察の捜査が入り、組織を取り巻く状況が変化しています。

そして、天吾は再び自分の前に姿を現した牛河に対し、明確な拒絶を示します。

Chapter 12 MORE THAN I COULD COUNT ON MY FINGERS――猫の町から戻った者に必要な儀式

続いて、Chapter 12です。

コウキ:
自分は、Chapter 12のラストで、ふかえりが天吾に言った言葉が気になりました。

“You went to your town of cats. Then came back on a train.”

ふかえりは、天吾に『Town of Cats』を読み聞かせてもらい、

天吾が「天吾の猫の町」に行き、電車で戻ってきたと言います。

さらに、

“If you go to a town of cats and don’t do anything about it afterward, bad stuff can happen.”

猫の町から戻った後に適切なことをしなければ、悪いことが起きるかもしれないと警告するんです。

ヒデ:
『Town of Cats』――猫の町。

天吾が父親のいる療養所に向かう列車の中で読んだ、あの物語ですね。

英語訳村上春樹『1Q84』10 天吾の内面――青豆の手、『猫の町』、父 スタイリッシュ英語読書会17【Book 2, Chapter 4, 8に言及】
英語訳『1Q84』の天吾視点であるBook2, Chapter 4, 8を読んで、天吾の内面について検討する。天吾の青豆に対する幼少期の思い出。父に会うための列車の中で読んだ短編小説『猫の町』、認知機能の衰えた父との会話が意味することは。英語訳村上春樹『1Q84』10番目の記事、スタイリッシュ英語読書会17番目の記事。

コウキ:
天吾が行ったのは、父親が入所する千葉県の療養所でした。

それを、ふかえりは、「天吾の猫の町」に行ったと言っている。

猫の町は、入ることはできても、戻ることができない場所でした。

ヒデ:
ところが、天吾は無事に列車で帰ってきたように見えますね。

コウキ:
はい。

しかし、自分は、ふかえりの指摘を受け、房総半島の千倉が、天吾にとっての「猫の町」であり、

天吾の身体が物理的に帰ってきたということと、

天吾の精神が完全に元の世界に戻ったこととは、

同じでないのかもしれないと感じました。

ヒデ:
興味深い指摘ですね。

そうすると、天吾の精神が戻ってきていないことによって、何か天吾に悪いことが起きるということなのでしょうか。

コウキ:
そう思います。

ここで、ふかえりは「purification」が必要だと言います。

Purificationは、浄化、清めを意味する英単語で、日本語のお祓いを意味します。

いったい何を清める必要があるのか?

そして、雷鳴の中、

“Come here and hold me,” Fuka-Eri said. “We have to go to a town of cats together.”
“Why?”
“The Little People might find the entrance.”
“Because I haven’t done a purification?”
“Because the two of us are one,” the girl said.

ふかえりは、Little Peopleが入口を見つけてしまうかもしれないと説明します。

ヒデ:
天吾が猫の町に行ったことで、天吾に何かが憑いてしまったのか。

あるいは、猫の町とこちらの世界をつなぐ通路が開いてしまったのか。

謎めいていますね。

コウキ:
さらに、自分は、ふかえりによる、二人は一つという趣旨の発言が気になります。

PerceiverとReceiverが、それぞれ単独では不完全な存在だとすれば、二人が一緒になることで、一つの機能を果たすのかもしれません。

Chapter 14 A PACKAGE IN HIS HANDS――青豆に会いたい。なぜ今まで気づかなかったのか

ヒデ:
そして、Chapter 14

雷鳴が響く中、ふかえりと天吾の間に、性的接触が生じます。

その描写は、単なる男女の関係というにはあまりに異常な、現実離れしたものだったように感じます。

マイ:
私は、この場面の描写があまりに生々しくて、正直、気持ち悪かった。

PercieverとRecieverには性的な含意がありそうだとは、Leaderの話からある程度予想はしていたけど、こんな感じとは……。

でも、私が、それ以上に驚いたのは、その後の天吾の発言なんだよね。

ヒデ:
青豆に関する発言ですね。

マイ:
そう。

ふかえりとの性的接触の後、天吾はこう考える。

Aomame, Tengo thought. 
I have to see Aomame, Tengo thought. I have to find her. Why has it taken me so long to realize something so obvious? She handed me that precious package. Why did I toss it aside and leave it unopened all this time? He thought of shaking his head, but that was something he could not yet do. His body had still not recovered from its paralysis.

天吾は突然、青豆に会わなければならない、彼女を探さなければならないと考える。

そして、どうしてこんな当たり前のことに、今まで気づかなかったのかと自問する。

私が言いたいのは、ズバリ、

今頃?

ヒデ:
マイさんは、やっぱり、天吾に厳しいですね。

マイ:
だって、天吾はずっと青豆のことを考えていたんでしょ。

おまけに長い小説の主人公にまでして。

小学生のときに手を握られた記憶を、20年も大切にしている。

それなのに、会おうという発想がなかった!?

ヒデ:
僕は、この場面で天吾が青豆との記憶をpackageにたとえていることが面白いと思いました。

彼女が手渡してくれた大切な包みを、開けないまま放置していた。

そのことに、ようやく気づいた。

このprecious packageという比喩は、なかなか美しいのではないでしょうか。

青豆が小学生の天吾に手渡したのは、単なる好意ではなかったのかもしれません。

彼女の存在そのもの、あるいは彼女との未来につながる何かだった。

ところが、天吾はその贈り物を受け取っただけで、中身を確かめようとしなかった。

マイ:
それにしても、20年も開けずに置いておくなんて。

大切にしていたというより、放置していた。

怖いから、逃げていたという方がしっくりくるよね。

今頃になって「会いたい」なんて、なんて、後ろ向きで優柔不断な男なのかと、改めてあきれる。

ヒデ:
手厳しい。

たしかに、天吾には行動力が足りなかったようにも思います。

ただ、僕は、マイさんの厳しい意見に加え、少し違う側面も気になりました。

なぜ、ふかえりとの出来事の直後に、天吾は青豆に会いたいと強く思ったのでしょうか。

たまたま、偶然、このタイミングにひらめいたとは思えません。

マイ:
たしかにそうだね。

ふかえりとの儀式によって、天吾の中で何かが変化した可能性はあるかも。

ヒデ:
もし、ふかえりとの行為がpurificationだったとすれば、その結果、天吾または天吾の周囲に何か変化が生じた。

そう考えることもできる気がします。

マイ:
もしかすると、あの儀式によって、天吾と青豆を隔てていた何らかの障壁が取り除かれたのかもしれないね。

二人が再会するために、ふかえりが必要だったということ……?

ヒデ:
その可能性もあります。

ただ、現段階では、ふかえりと天吾の間で行われた儀式の意味はわかりません。

一つ確かなのは、天吾がここで初めて、青豆との再会を具体的な目的として意識したことです。

これまで、青豆は天吾の記憶の中、空想の世界にいました。

しかし、ここで、

青豆は、天吾にとって、実際に探し求める存在になったのです。

マイ:
青豆に何かあったというよりは、天吾に何か変化が生じたということかもしれないね――。

Chapter 16 LIKE A GHOST SHIP――青豆は、すぐ近くにいる?

ヒデ:
Chapter 16でも、天吾とふかえりの会話に、青豆が登場します。

ヒナ:
私は、Chapter 16末尾、ふかえりが、青豆という名前を、一音ずつ確かめるように口にした部分が気になりました。

“Ah-oh-mah-meh,” Fuka-Eri said slowly, as if pondering each syllable.
“Yes. Green Peas. It’s an unusual name.”
“You want to meet her,” Fuka-Eri asked without a question mark.
“Yes, of course I want to meet her,” Tengo said.
Fuka-Eri chewed her lower lip as she took a moment to think about something. Then she looked up as if she had hit upon a new idea and said, “She might be very close by.”

天吾は、青豆――グリーンピース――が珍しい苗字であることを説明します。

そして、ふかえりは天吾に、青豆に会いたいのかと尋ねるのです。

天吾は、もちろん会いたいと答えます。

その後、ふかえりは、

青豆がすぐ近くにいるかもしれない

と告げます。

ふかえりは、どうして青豆の居場所について、そんなことが言えるんでしょう。

ヒデ:
そもそも、ふかえりと青豆は、直接会ったことがないはずです。

それなのに、青豆の存在を感じ取っているかのようです。

ふかえりの、Perceiverという役割とも関係があるのでしょうか。

ヒナ:
それも考えられます。

ただ、私は、ふかえりの発言を文字どおりに受け取ってよいのか疑問です。

すぐ近くにいるというのは、物理的な距離のことだけではないのかもしれません。

ヒデ:
というと?

ヒナ:
例えば、別々の世界にいたはずの二人が、何らかの意味で非常に接近している、という可能性です。

私は、Chapter 11における青豆とLeaderの対面から、内面と外側の世界の境界が崩壊しているような感覚を覚えていました。

ヒデ:
ヒナさんは、境界があいまいになっていると指摘していましたね。

英語訳村上春樹『1Q84』9 標的と対面する青豆――崩れ行く境界 スタイリッシュ英語読書会16【Book 2, Chapter 9, 11に言及】
英語訳『1Q84』の青豆視点であるBook2, Chapter 9, 11を読んで、青豆が対面した標的であるはずのLeaderの印象、青豆とLeaderの間で交わされる謎に満ちた会話。ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』「大審問官」が引き合いに出される。その意味を推し量ることは極めて困難。英語訳村上春樹『1Q84』9番目の記事、スタイリッシュ英語読書会16番目の記事。

世界の境界がなくなるということが二人の距離を近づけるということでしょうか。

ヒナ:
そうかもしれません。

そして、ヒデが指摘したあの仮説です。

青豆が天吾の小説世界の登場人物だとすれば、天吾と青豆は、別の世界にいたはず。

自分が書いた物語の中にいる人物に、現実には会えないですからね。

ところが、小説と現実の境界が崩壊したとすれば……。

――小説の中の青豆に会うことができる。

マイ:
待って!

それじゃあ、ヒナは、ここで天吾が会いたいと言っている青豆は、天吾が小学校の時にクラスで一緒だった現実の存在としての青豆ではなくて、

天吾が書いている小説の中の架空の青豆

っていうこと!?

ヒナ:
うん。私はそう思う。

そんなことを考えている天吾って、これまで以上に、なお、一層気持ち悪くない?

マイ:
いや、もう、もし、そうだとしたら嫌悪感を通り越してあきれるけどね。

妄想と現実の区別がつかなくなっているってことじゃん!

コウキ:
女性陣お二人の天吾に対する激しい嫌悪感は一旦置いておくとして、

ヒナさんのご指摘面白いです!

天吾が会いたいと思っているのは、あくまで架空の青豆。

しかしそうすると、ここで、さらに問題が生じますね。

天吾の思い出の中にある現実の青豆、

天吾の小説の中にいる架空の青豆、

その二人は、同一人物なのか。

タク:
僕も、ヒナさんのご指摘がしっくりきます。天吾はあくまで自ら生み出した架空の青豆に会いたいと思っている。

ヒデさんの仮説と合わせて、その二人は別人ではないかと、思います。

ヒデ:
天吾をめぐる検討がさらに面白くなってきました。

そして、天吾が探し求める青豆の実態を考えるうえで、次のChapter 18は非常に重要になりそうです。

Chapter 18 THAT LONELY, TACITURN SATELLITE――天吾が見上げた夜空

いよいよ、今回の中心となるChapter 18です。

天吾は、青豆との小学生時代の記憶を思い出します。

そして、突然、空の光景がよみがえるのです。

Twenty years went by.
It was the moon, Tengo thought.
I was looking at the moon, and so was Aomame. That gray chunk of rock hanging in the still-bright sky at three thirty in the afternoon. That lonely, taciturn satellite. We stood side by side, looking at that moon. But what does it mean? That the moon will guide me to her?

二人は並んで立ち、午後3時30分の空に浮かぶ月を見上げていました。

天吾は、その月が自分を青豆のもとへ導いてくれるのではないかと考えます。

Side by side――二人は並んでいた

コウキ:
自分には、ここで、とても気になる英語表現があります。

side by side

です。

ヒデ:
並んで、隣り合って、という意味ですね。

コウキ:
もちろん、英語としてはありふれた表現です。

でも、自分はこの表現に見覚えがあるんです。

ヒデ:
そういえば、コウキ君が、side by sideが気になると指摘していたことがあった気がします。

どこでしたっけ?

コウキ:
以前、青豆が初めて夜空の異変に気が付いた場面を読んだときです。

英語訳村上春樹『1Q84』5 夜空を見上げた青豆―決定的に変わっていた世界―スタイリッシュ英語読書会12【Book 1, Chapter 19まで言及】
『1Q84』英語訳Book 1, Chapter 19 までを読み、登場した二つの決定的要素についての印象を検討。夜空の光景とLittle People。英語訳村上春樹『1Q84』5番目の記事。スタイリッシュ英語読書会12番目の記事。

二つ並んでいる情景が、非常に印象的でした。

ヒデ:
なるほど。

並んで月を見上げた二人の子供。

これが、夜空の光景に用いられていたのと同じ表現で形容されている……。

コウキ:
そうなんです。

天吾の記憶の中では、天吾と青豆が並んでいる。

一方、1Q84の夜空。

単なる偶然の表現かもしれませんが、象徴的なつながりを感じます。

ヒデ:
夜空の光景が、天吾と青豆を象徴しているということでしょうか。

コウキ:
その可能性はあると思います。

まして、夜空の光景が、天吾の創造したものであることからすれば、夜空の光景が、青豆への思いを反映していてもおかしくないように感じるのです。

ヒデ:
天吾が夜空の光景をどのような思いで具体化したのか、気になってきました。

天吾が夜空を見上げる

さて、天吾は、その後、たまたま見つけた小さな公園で、滑り台に上り、空を見上げます。

夜空に浮かぶいつもの月を見て、感傷に浸ります。

長い間月を見つめた後、天吾にとって決定的場面が訪れます。

It was then that Tengo realized there was another …

皆さん、ここを読んだときかなり驚いたのではないでしょうか。

コウキ:
とてもビックリしました。

天吾にもあの光景が見えるのか、という驚きです。

自分は、ついに、天吾も1Q84にやってきたのだと感じました。

タク:
僕も相当ビックリしました。

まあ、展開的にいずれこうなるとは思っていましたが、Little Peopleや牛河といったなにがしかの前触れがあると思っていましたので、突然だったなという印象です。

ヒナ:
私も、いずれ、天吾の前にもこの光景が現れるとは予想していました。

それに、私は、もともと、天吾が、青豆と同じ「1Q84」の世界にいるとは思っていましたから。

マイ:
私も、天吾は「1Q84」にいるとは思っていたから、いずれ、その光景を目にするとは思ってはいたんだけど、青豆を探そうとする過程でこれを目にすることになったのは、少し驚き。

ヒデ:
僕も、タイミングが気になりました。

天吾がこの光景を発見する過程を振り返ってみましょう。

まず、天吾は公園の滑り台に昇り、いつもの月を見上げます。

そして、長いこと、月に関する感傷に浸ります。

その後、もう一つの月があることに気づくわけです。

タク:
確かに少しおかしいです。

最初から見えていたわけではないってことですもんね。

ヒデ:
そうなんです。

天吾は、いつもの月を長いこと見ていました。

すぐには異変に気が付いていないんです。

マイ:
普通は、この光景があれば、すぐ気づくよね?

side by side のはずだし。

コウキ:
ということは、天吾がいつもの月を見ている間に、突如、それが出現したということでしょうか?

ヒデ:
そうかもしれないです。

いつもの月を見つめて、青豆のことを強く考えていたら出現した――、

ようにも読めます。

ヒナ:
青豆を思うことと、天吾の前に出現した夜空の光景。

この二つの出来事に関係があるのでしょうか。

ヒデ:
関係ありそうですね。

少なくとも、物語の構成としては、非常に意味深いと感じます。

天吾は青豆に会いたいと強く願うようになった。

そして、20年前、青豆と共に、月を見上げた記憶を思い出す。

その直後に、青豆が生きている世界の象徴であるあの光景が出現する。

偶然として片づけるには、出来すぎているように思います。

That Lonely, Taciturn Satellite――孤独で寡黙な月

ヒナ:
私は、Chapter 18のタイトルそのものが気になります。

THAT LONELY, TACITURN SATELLITE。

これは、おそらく、普通の月を「孤独で寡黙な衛星」と表現しているんですよね。

ヒデ:
Taciturnは、無口な、寡黙なという意味です。

ヒナ:
先ほどのコウキ君のside by sideに関する指摘が私もすごく気になります。

side by sideという表現が、天吾と青豆の関係を象徴し、同じ表現が夜空の光景の描写に用いられていた……。

そうすると、

普通の月――もともと、現実に存在しているいつもの月、

これもまた、何かを象徴しているという気がしてきます。

LONELY, TACITURN

孤独で、寡黙

この形容詞が当てはまる人物に思い当たりませんか、ヒデ。

ヒデ:
――まさか!?

ヒナ:
そうです。

いつもの夜空に浮かんでいる普通の月は、

天吾その人を象徴しているのではないでしょうか。

マイ:
天吾って、孤独で寡黙なキャラクターだよね。

そうすると、まさか、普通の月は、小説世界の創造主である天吾を投影している!?

タク:
ということは、もう一つは――。

ヒデ:
これは、青豆について、さらに検討を進める必要がありますね。

次回予告――青豆、ついに『Air Chrysalis』を読む

ということで、次回は再び青豆に視点を戻します。

Book 2, Chapter 19まで。

天吾の創造した小説世界の登場人物かもしれない青豆。

その仮説については、ひとまず脇に置きます。

青豆自身の物語は、いよいよ重大な転換を迎えます。

最後にして最大の仕事を終えた青豆。

彼女は、Sakigakeの追跡から逃れるため、名前も過去も捨て、the dowagerが手配した隠れ家に身を潜めます。

それまでの人生を捨て去り、外の世界から隔絶された生活を始める青豆。

そこで彼女は、ついに『Air Chrysalis』を読むことになる。

天吾が書き直した、ふかえりの物語。

これまで僕たちは、その小説の存在と、そこに描かれているいくつかの不可解な出来事を断片的に知らされていました。

しかし、青豆がその小説を読むことで、『Air Chrysalis』の全体像と、

さらに衝撃的な光景

が明らかになります。

青豆が生きている世界と、『Air Chrysalis』に描かれた世界。

この二つの世界には、いったいどのような関係があるのか。

そして、天吾が書き直した物語の中に、青豆の運命を読み解く手がかりが隠されているのでしょうか。

次回、英語訳『1Q84』15

「青豆が読んだ『空気さなぎ』――空の光景がもたらす衝撃」

青豆の視点から、1Q84という世界の正体にさらに迫っていきます。

ご期待ください。

このブログ記事へのご意見ご感想がありましたら、コメントを頂けると嬉しいです。

(次回、英語訳村上春樹『1Q84』15の記事はこちら。)

英語訳村上春樹『1Q84』15 『空気さなぎ』を読む青豆――夜空の光景の衝撃 スタイリッシュ英語読書会22【Book 2, Chapter 19まで言及】
最後の仕事を終え、隠れ家に潜む青豆。彼女が手にした『空気さなぎ』を通じて明らかとなるリトル・ピープルの実態。そして、夜空の光景がもたらす衝撃。英語訳村上春樹『1Q84』15番目の記事、スタイリッシュ英語読書会22番目の記事。

(英語訳『1Q84』が英語多読初心者にとっていかにおすすめであるかはこちらの記事で詳しく説明しました。)

村上春樹『1Q84』英語訳—英語多読初心者に絶対おすすめ【ネタバレ無し】
村上春樹『1Q84』英語訳を、英語多読初心者にもっともおすすめの英語多読素材として紹介する記事。面白さ、英文の深み、難度をネタバレしないようにしながら説明する。

(Audibleの『1Q84』英語訳音源も非常におすすめです。)

Audibleで聴く村上春樹『1Q84』英語訳―英語多読多聴初心者におすすめする至高のリスニング音源
Audibleで聴く村上春樹『1Q84』英語訳―英語多読多聴初心者におすすめする至高のリスニング音源。英語多読多聴を始めたばかりの人に『1Q84』英語訳オーディオブックがおすすめの理由。青豆と天吾の声、オーディオブックの利用方法などを紹介。

(スタイリッシュ英語読書会のコンセプトと初期メンバーの紹介はこちらを参照。)

スタイリッシュ英語読書会 Introduction
英語読書をスタイリッシュに楽しむための読書会の導入。英語で名作を深く読み解き、語り合うことの楽しさを追求し、教養として武器になる英語読書を目指している。読書が好きで、とにかく英語を楽しみたいという人に最適な英語読書コミュニティ。

(これまでの英語訳『1Q84』読書会の記事、一冊目の課題図書『Never Let Me Go』に関する記事はこちらをご覧ください。)

教養として武器となる英語読書を目指す読書会。スタイリッシュな英語図書をスタイリッシュに読みこなし、カッコいい読書歴を形成する。
社会の第一線で活躍し、深い教養と高い英語力を有するメンバー達が、より高みを目指し、村上春樹やカズオ・イシグロ、ジョージ・オーウェルなど、スタイリッシュな英語作品を、スタイリッシュに楽しんでいく。

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